未分類

「一線を越えたARの軍事利用」に反対するMicrosoftの従業員たち

コラム
» 2019年03月03日 06時00分 公開

米Microsoftが大幅にスペックアップした「HoloLens 2」を発表。進化したAR(拡張現実)のテクノロジーは、軍事にもどんどん入り込みつつあります。そんな中、同社が米陸軍省と交わした契約について、従業員有志が反対運動を始めました。

[佐藤由紀子,ITmedia]




 米Microsoftがついに発表した、MR(Mixed Reality)対応ヘッドセット型デバイスの新モデル「HoloLens 2」。先代から2年もかかっただけあって、だいぶ進化しました。解像度は上がったし、視野が広がったし、見た目もコンパクトで軽くもなったそうです。

 “HoloLensの父”ことアレックス・キップマン氏は「3倍快適になった」と言っています。無線状態で、バッテリーが2〜3時間もちます。

HoloLens 2
大幅にスペックアップした「HoloLens 2」を発表する“HoloLensの父”アレックス・キップマン氏。装着時の快適さは3倍になったとのこと

 指の動きがそのまま伝わるのも進歩です。ピアノを弾いて見せたデモは印象的でした。10本の指の1本ずつの動きが伝わるのが分かりました。

HoloLens 2
10本の指を追跡できる新しいセンサーシステムにより、現実世界に合成したCGのピアノを演奏することだってできます

 医師やエンジニア、建築家、デザイナーがHoloLens 2を装着して仕事をするデモ動画はとてもリアルで、便利そうです。もう実用レベルなんじゃないでしょうか。

HoloLens 2
HoloLens 2の活用は医療でも

 デモ動画では紹介されませんでしたが、HoloLens 2が活用されそうな重要な分野がもう一つあります。それは、軍事です。

 Microsoftは2018年11月に米陸軍省とAR(Microsoft的にはMR)を兵士の訓練や実際の戦闘に活用する「Integrated Visual Augmentation System(IVAS)」契約を結んでいて、特別設計のHoloLensを10万台以上買ってもらえることになっています。

 HoloLens 2発表の2日前になって、Microsoftの従業員有志がサティア・ナデラCEOと法務顧問のブラッド・スミス上級副社長宛にIVAS契約に反対する公開書簡を送りました

 スミス上級副社長が2018年10月に公式ブログで説明しているように、Microsoftは40年以上前から国防総省などの政府機関にさまざまな技術を提供してきました。海軍もフライトシミュレーターを訓練ツールとして採用しています。

 でも、これまでは訓練ツール止まりだったけれど「今回の契約は武器開発という一線を越えた」もので「HoloLensを人殺しの道具にするものだ」と従業員有志は批判しています。

 HoloLensは訓練で使われるだけでなく、戦場でも兵士が装着し、温度センサーで目に見えない敵を察知したり、味方同士の位置情報を把握してフォーメーションを組んだりすることに使われる見込みです。HoloLensは直接武器にはなりませんが、戦場で敵を攻撃するのに役立つ道具になります。

 そもそもどういう契約内容なんでしょう。陸軍省が8月に公開したIVASの「Statement of Objectives」(SOO、政府が請負業者を募集するときに依頼内容と目的を明示する仕様書)をVR専門メディアのUploadVRアップロードしているので、ちょっと読んでみました。

 目を引いたのは、訓練用シミュレーションソフトウェアの仕様です。

 広大で、ジャングル、酷寒の地、砂漠、市街、海上などバラエティに富んだ戦場空間「One World Terrain」を構築し、その戦場には3Dの人や戦車やいろんな物体もあって、爆破すればちゃんと壊れなくてはいけない。その仮想戦場では複数の兵士が互いにアイコンタクトやジェスチャーでのコミュニケーションが本番と同じように使えなければいけない。仮想の人は兵士が装着している温度センサーに検出されなければいけない。

 そして、リアルな戦場環境を開発するために、政府はデータを提供します。つまり、リアルなデータを使ってものすごくリアルなHoloLens用のFPSコンバットゲームを作るようなものです。

 ただ、One World Terrainは、ゲームではありません。これで訓練した兵士は戦場でも同じようにHoloLens 2ベースのHUD(ヘッドアップディスプレイ)を装着し、訓練の延長のような感覚で実際に人を攻撃することが考えられます。

 もちろん倫理的なことを考えるべきです。でも、よりリアルなコンバットゲームを開発したい人や機械学習用のデータが欲しくてたまらない人の中には、すごく魅力的なプロジェクトに映って挑戦したくなる人が出てくるかもしれません。予算はたっぷりだし、データもくれるし。

 SOOにはHUDの重さ制限(約680gまで)や許容レイテンシ(33ms)なども細かく指定されています。目標がはっきりしていて、開発が進みそうです。

 HoloLens 2発表の場では、軍でのユースケースは紹介されませんでした。でも、3月に開催される米陸軍協議会の年次イベント「Global Force 2019」では、もしかしたらHoloLens 2ベースのHUDが披露されるかもしれません。

 陸軍ブースのスケジュールには「One World Terrain and the Synthetic Training Environment」やら「Artificial Intelligence/Machine Learning」やらの、IVASに関連しそうなプログラムがずらっと並んでいます。イベント告知画像も、HoloLensみたいなものをつけた兵士だったりします。

Global Force 2019
Global Force 2019のWebサイト


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Most Popular

To Top
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。