未分類

欧州に7万円台の5Gスマホを投入、2019年のXiaomiは「脱中国」「脱低価格」

連載
» 2019年04月07日 11時29分 公開

599ユーロという低価格で5Gスマートフォン市場を本気で攻める。Xiaomiが2019年に狙っているのは、先進国市場の本格展開だ。5Gスマートフォン市場でXiaomiをシェア1位に押し上げる効果も期待できる。

[山根康宏,ITmedia]




 復活を遂げたXiaomiが2018年の決算を発表した。「インターネット企業」という呼称を自ら掲げる同社だが、事業の柱は今でもスマートフォンだ。そのスマートフォンも多角展開が軌道に乗り始め、好調な結果を示している。Xiaomiが2019年に狙っているのは、先進国市場の本格展開だ。

5Gスマホが7万円台! 先進国でシェアアップを一気に狙う

 「『Mi MIX 3 5G』は599ユーロ(約7万5000円)で5月に発売」。2018年2月24日、MWC19 Barcelonaの会期前日に行われたXiaomiの発表会で、同社のWang Xiangシニアバイスプレジデントが同社初の5Gスマートフォンの価格をアナウンスすると、会場を埋め尽くしていた世界中のメディアやパートナー関係者の間から大きな歓声が上がった。Xiaomiのグローバル事業のトップであるXiang氏が5Gスマートフォンの投入を欧州から行うと発表したことも大きなトピックだ。

Xiaomi
Xiaomiの2019年は5Gに注力する

 5G対応のスマートフォンは、Mi MIX 3 5Gが発表された24日の午前中までにSamsung Electronicsの「Galaxy S10 5G」が公式にアナウンスされた唯一の製品だった。韓国での価格は256GBモデルが139万ウォン(約13万6000円)、512GBモデルは155万ウォン(約15万2000円)という。Mi MIX 3 5Gと比べると、最大で2倍ほど高い。

Xiaomi
599ユーロという低価格で5Gスマートフォン市場を本気で攻める

 ところがXiaomiの5Gスマートフォンは、その約半額の価格なのだ。もちろんスペックの違いはあるものの、通信モデムはQualcommのX50、プロセッサはSnapdragon 855と最高のものを搭載している。Xiaomiが初めてスマートフォンを市場に投入したときの「性能はiPhoneやGalaxyと変わらず、価格は半分」という特長を、5Gモデルでも実現したのだ。

 そしてこのMi MIX 3 5Gは欧州市場の5G開始に合わせて発売される。Xiaomiはこれまで中国でハイエンドモデルを投入後、グローバル市場へ展開してきた。Mi MIX 3 5Gと同時にバルセロナで発表されたフラグシップモデル「Mi 9」もその4日前、2月20日に北京で発表会が先に行われている。しかしMi MIX 3 5Gは中国の5G開始を待たずに、先に5Gを開始する市場に積極的に投入されるのである。

Xiaomi
Mi MIX 3 5Gを導入する欧州の通信事業者

 中国の5Gサービス開始は順調にいっても2019年後半以降とまだ先だ。中国で5Gが始まるときにはHuawei、OPPO、Vivo、OnePlus、ZTEなど中国各社がこぞって5Gスマートフォンを投入するだろう。家電のハイセンスやコンカも5G端末を開発中であり、サービス開始と同時に5Gスマートフォンの販売競争も激しくなることが予想される。

 Xiaomiがどんなにいい製品を出しても、市場の話題はHuaweiの折りたたみ型5Gスマートフォン「Mate X」になることは目に見えている。Xiaomiの発表会から数時間後にMate Xを発表したHuaweiの5Gスマートフォンの展開戦略は「したたか」という言葉がぴったりなほど、中国市場を意識したものといえる。

 一方、海外市場に目を向けると、2019年上半期に登場する5GスマートフォンはSamsungの「Galaxy S10 5G」とMotorolaの合体モジュール「5G mod」を接続できるスマートフォン程度だ。LGやZTEの端末も上半期に間に合うかもしれないが、製品の種類は多くない。しかも各社の5Gスマートフォンは1000ドルを超える価格になるだろう。

 Xiaomiがライバルと見ているHuaweiは、上半期に「Mate 20」の5G版を投入予定だが、ベースとなるMate 20の価格を考えると、これも価格帯は他社と変わらないだろう。フランスの通信事業者、Orangeはこれまでも自社ブランドの低価格スマートフォンを出しており、5Gスマートフォンも投入予定だが、「努力して1000ユーロを切る程度の価格にしたい」とMWC19 Barcelonaのブース担当者は話していた。

Xiaomi
Orangeブランドの5Gスマートフォン。価格は1000ユーロを切るレベルになりそうだ

Xiaomiのスマホが5Gユーザーを急増させる?

 このように各社の5Gスマートフォンが日本円で10万円を超える価格が当たり前になろうとしている状況の中で、Xiaomiが約7万5000円でMi MIX 3 5Gを投入すれば、より多くの消費者が5Gサービスに飛びつくことが期待できる。通信事業者側も「Xiaomiの5Gスマホなら2年で無料」といった大胆なキャンペーンも提供できるだろう。つまりXiaomiの5Gスマートフォンは、5Gのイニシャルユーザーを急増させるという市場拡大を後押しするものになるだけではなく、5Gスマートフォン市場でXiaomiをシェア1位に押し上げる効果も期待できるのだ。

 Xiaomiは2018年に欧州市場へ本格的に参入を開始した。しかしブランド力が弱いために高性能、低価格の製品を投入しても消費者はなかなか目を向けてくれない。100ユーロ台で購入できる低価格ライン「RedMi」シリーズも、同じ価格帯で機能は落ちるWikoなどの製品と同じ土俵で戦わざるを得ないのが実情だ。

Xiaomi
パリでも展開しているXiaomiのオフィシャルストア

 しかし5G開始とともに欧州市場にスマートフォンを投入すれば、Xiaomiの名前は通信事業者の店頭やニュースなどで常に聞かれるものとなり、知名度は一気に高まる。しかも性能も品質も高いとなれば、iPhoneやGalaxyに買い替えようと考えている消費者の関心を引き付けることができる。もちろん今すぐiPhoneからXiaomiに買い替える消費者は多くないだろうが、「Xiaomiというすごいスマートフォンがあるらしい」と消費者の脳裏に記憶してもらうだけでも十分な効果がある。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

連載
» 2019年04月07日 11時29分 公開

[山根康宏,ITmedia]




「価格」から「信頼」へ ブランドアップが2019年の重点課題

 Xiaomiが2019年3月に発表した2018年度決算によると、スマートフォンに加えIoT製品も好調な販売を記録しており、売上高は約1749億元、利益は約135億元と黒字となった。2018年第4四半期だけを見ると売り上げが若干落ちているが、これは2019年に向けての製品販売スケジュールの調整によるもの。現在低価格モデルとして展開しているRedMiは、2019年から別ブランドとしてXiaomi本体とは別の製品として販売される予定だ。

Xiaomi
RedMiシリーズは2019年からXiaomi本体とは別展開となる予定

 つまりハイスペック、プレミアムブランドの「Mi」(Xiaomi本体)と、低価格、高コストパフォーマンスのRedMiが別々に展開される予定なのだ。この戦略はHuaweiの「Honor」が成功を収めている。今やHonorは「オンライン向け、コストパフォーマンス製品」ではなく、専用のリテールストアを持ち、しかもプロセッサにKirin980を搭載するハイスペックモデルもそろえる一大ブランドにまで成長した。

 Huawei本体の「P」「Mate」「Nova」シリーズと競合しつつも、それらの穴を埋める製品を展開することで、Huawei全体のスマートフォン販売数増をけん引しているのだ。

 中国市場を見ると、Huaweiの強さは際立っている。大手調査会社カナリスによると、2018年の中国国内スマートフォン出荷台数数シェアはHuawei(Honor含む)が27%で断トツのトップ。2007年の20%から大きく伸ばした。一方、Xiaomiはシェアを11%から12%に引き上げたものの、出荷台数の増加率はHuaweiの16%に対してマイナス6%と明暗を分けてしまった。Xiaomiのマーケット展開方法ではHuaweiとの差を埋めるのは難しく、RedMiの本体からの切り離しで勝負をかけようとしているのである。

Xiaomi
Huaweiの中国での強さの一因はHonorブランドとの別展開だ(画像はカナリスから引用)

 スマートフォン成長が右肩上がりに伸びているインドでは参入1年でSamsungを抜き、Xiaomiがトップとなったが、いずれインドも市場が飽和することは見えている。インドネシアもシェアは2位だが、この2つの大国の次に成長が期待できる大きな市場は世界には残されていない。Xiaomiは新興国では価格勝負で数を伸ばしてきたが、今後は価格以外で消費者からの支持を受けるための戦略変換が必要だ。

 先進国への参入は、インドやインドネシアのような大きな販売数の増加は期待できない。しかしXiaomiのブランド力を高める効果は十分にある。パリの街中をオレンジ色に「MI」のロゴの入ったバッグを持った消費者が歩くだけでも十分目立つ。ちなみにフランスの通信事業者の代名詞といえばOrange。その名の通り、オレンジ色がコーポレートカラーでこれはXiaomiと一致する。

 Xiaomiの店舗を訪れる客が増えれば同社のIoT製品へ興味を持つ消費者も増えるだろうし、品質の高いスマートフォンを実際に手に取ってもらえれば、既に価格競争が始まったスマートフォンから制御できるLEDライトなどのIoT製品も、Xiaomiの製品を選んでくれるようになるだろう。

Xiaomi
Xiaomiが掲げる「Smartphone+AIoT」戦略。スマートフォン以外の柱を確立させるためにもブランド力強化が重要だ

 2018年のXiaomiのスマートフォン販売台数は、悲願だった1億台を初めて突破した。しかしもはやスマートフォンの「数」だけを追う時代ではないだろう。同社の売り上げはいまでも全体の3分の2をスマートフォンに頼っている。今後売り上げを安定させながら伸ばしていくには、IoTや生活製品、そしてインターネットサービスという他の柱の売り上げを増やす必要がある。そのためには「Xiaomi」のブランドを人々から愛され、信頼されるものにしなくてはならない。2019年のXiaomiのスマートフォン展開は「ブランド力アップ」を図るために、これまでとは全く異なるものになりそうだ。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Source: IT総合情報

Most Popular

To Top
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。